水茄子とは? 普通の茄子とどう違う?召し上がり方や料理方法もご紹介致します。

大阪府泉州地方の名産品 水茄子 

 水茄子は百貨店やデパートの専門店で贈り物などに利用される高級食材として目にすることがある野菜ですが、元々は大阪府の泉州地域で栽培されていたものが品種改良され、色艶を重視し品物として取り扱いやすく、より風味よく瑞々しい種が採用された泉州特産の茄子の一種です。
主に漬物やサラダなど生食できる他、煮物、和え物としても非常に優秀な食材で、通常の茄子とは違った食感や風味を味わうことができる逸品です。
本記事ではこの水なすの漬物としての漬け方や調理方法、生で食べるおすすめの例をご紹介致します。

 

水茄子について

水茄子の特徴

 水茄子は柔らかく薄い皮、水分を豊富に含み、ほのかな甘みがあるのが特徴で果物に近い性質を持っています。また通常の茄子と異なり、エグ味の素である灰汁が少なく、生で食べることも可能です。
生食が可能なため、ぬか漬けに最適で漬かりの浅い浅漬けでの風味や食感はこの上ない極上の口当たりと喉ごしを楽しめます。
皮は絹のような薄さで柔らかい果肉の中に豊潤な水分含まれており、染み出てくるくらい瑞々しいです。
もちろんサラダの具材としてもとても良くマッチし、色んな素材とのハーモニーが楽しめるでしょう。
大昔は夏の暑い時期に畑仕事の喉を潤す水分補給のために主に農家で食されていたものでした。地産地消で他の地方には流通していませんでしたが、漬物においては近年クール便などの冷蔵運搬技術が発達したおかげで一部の漬物業者が取扱いをはじめたのがその始まりでした。

 

水茄子の美味しい時期

 従来、水茄子は気温の高い夏季の6~8月が旬だとされていましたが、近年の気温上昇により旬が早まりハウス栽培の場合は5月初旬から6月の梅雨までが丁度いい気温で水なすにとって最も生育に適しており、瑞々しく美味しい水茄子が出来るようになってきました。
露地栽培の水なすは6月下旬から8月初旬、9月から11月の秋茄子も旬となります。
また5月20日は「水なすの日」とされ、イベントなども催され、水茄子の旬を楽しむことが出来ます。
栽培においては自らの葉っぱが当たったり擦れたりするだけで傷付いたりするため、常に気を配る必要がある非常にデリケートな野菜です。
またその瑞々しさは泉州地域の地質や地域性から起因すると言われており、畑が海が近いために潮風の影響でその果実に水分を溜め込むようになったのではないかと推測されています。
10年程前は御歳暮の時期まで収穫されていた水茄子でしたが、近年は気候変動の影響によって栽培可能な時期が年々短くなってきており、食卓で楽しめる期間もそれに同じく影響を受けていると言わざるを得ません。
冬季も一部流通している水茄子もありますが、ビニールハウスで加温栽培されたものであり、夏季とはまた違った様子が見られるでしょう。

 

水なすの栽培について

水茄子の栽培の流れは土づくり、育苗、畝への苗の植え付け、葉の剪定、花の受粉作業(とん付け)など収穫まで丁寧な管理作業が必要です。
水茄子の栽培方法には大きく分けて2つあり、露地栽培とハウス栽培があります。それぞれの栽培方法によって水茄子の質や特徴が変わります。

「露地栽培」

露地栽培はビニールハウスを使用せずに露天で風雨に晒されながら、一般的な野外の畑で栽培する方法です。
設備コストが抑えられるので初期投資や維持費などが少なくローコストで水ナス栽培が出来ますが、水なすは皮が薄く風で葉が当たるだけでも傷が付いてしまうので後述するハウス栽培よりも外的刺激を受けて、水ナスに皮が厚くなり、肉質が硬くなる傾向があります。また、日光を直接浴びるため、ハウス栽培のものより若干茄子の色が濃くなる傾向があります。
水なすの果実に葉っぱが当たってないか、害虫はついていないかなど小まめな手入れや気配りが求められます。
そのため、ソルゴー(ソルガム)というアフリカ原産の3mほどになる背の高い風防の役割をするイネ科の植物を畑の外周に植え、風から水茄子を守る方法で栽培環境を整えることもあります。またソルゴーには水茄子の天敵であるアブラムシなどを防除する役割があり、ソルゴーを好むアブラムシが寄ってきて、そのアブラムシを好むカメムシや蜂が集まってくるため、虫害から水茄子を守ってくれる効果を発揮します。
また露地栽培は後述するハウス栽培のように温度管理ができないので、5~11月中旬頃までの水ナスが成育に適した気温の時期しか栽培は出来ません。
露地栽培の水ナスは皮が厚くなる傾向があるため、ハウス栽培のものに比べると噛んだ時に皮の硬さを感じることが多く、ぬか漬けにすると皮だけ漬かって実の奥まで漬からないことがあるため、用途としては切り分けて果肉を露出させた調味液漬による水茄子の浅漬けや料理などに向いています。

「ハウス栽培」

ハウス栽培はビニールハウスを使用して風雨などの外的要因を除いて栽培環境を人の手でよりコントロールしやすくした栽培方法です。
水茄子は風など外的刺激の影響を受けやすいので、水なすの特徴を最大限に活かすにはハウス栽培が最適であると言えます。
ビニールハウスは設備費や維持費などコストが掛かるのですが、気温や雨の影響を受けにくいので温度や水の量を調節しやすかったり、風の影響を受けにくく、また基本的には無加温栽培ですが、ボイラーを使用してハウス内の温度を上げることが出来るので、気温が低い時期には加温栽培(促成栽培)で水なすの成育のスピードを上げることも出来るので、農家にとっては出荷に間に合わせることが出来る利便性もあります。
この加温が出来ることでビニールハウスでは冬場でも栽培が可能ですので旬の時期より数はかなり少なくなりますが、年中水茄子を栽培する農家も存在します。
ハウス栽培での水茄子の栽培期間は上記のように理論上は年中ありますが、通常は3月下旬から11月初旬までです。
水ナスは自らの葉が当たるだけでも傷が付いてしまうので、風の影響を受けないことは見た目にも肉質にも重要になります。
もちろん、風がなくても生え方によってはどうしても葉が当たってしまうこともあるのでその都度丁寧な手入れはハウス栽培においても必要です。
また葉っぱが果実に密着すると水ナスの紫色が出ずに白く色抜けしてしまうこともあるので気は抜けません。
さらにハウス栽培は外的環境の影響を受けにくいことで土壌の管理がしやすく、水茄子の成育にとって適切な土づくり、環境づくりに注力することができます。
長年、水茄子農家を営んでいる山本さんにお話を聞くと、この水茄子の土づくりが大事で、土中の微生物が水茄子にとって良い環境を作り出すように調整し、水茄子の木が病気にならないように順調に育てられるよう管理するのが水茄子栽培の胆であると言われました。
また山本さんのこだわりとして通常は共同の溜池から農業用水を使用するところを独自の自然に近い状態の溜池から注水することで水茄子にとっても土中の微生物にとってもより活動しやすい水を与えることがより良いと考えているということでした。
さらに加えて、木の下に落ちた水茄子の葉は病気の元となるため、処分するのが普通だそうですが、山本さんのハウスでは落ちた葉は土づくりの時に栽培し終わった水茄子の木と混ぜて使用し、絶妙な土壌管理によって再利用するという独自の方法を採用しているそうで、この土づくりの方法は通常であれば水茄子の木は病気になる確率が高いのですが、独自の技術でほとんど病気にならずに成育しているという他に類を見ない栽培方法を実践されていることは驚きでした。
いずれも水茄子にとって良い微生物を活かすことが重要だということで、水なすを乳酸菌たっぷりの糠床に漬けて美味しく風味が長持ちするように環境を保つという弊店のこだわりと考え方が共通していることが分かり、そのことに感動し目からウロコでした。
ハウス栽培の水なすは皮が柔らかくて歯切れがよく果肉も柔らかいので、しっかり実の中まで徐々に漬かっていくので、特にぬか漬けに最適です。
弊店ではハウス栽培の水茄子農家から卸して頂いており、美味しい水茄子作りの栽培と水なすを漬ける美味しいぬか床の製造、農業と漬物製造お互いがそれぞれに注力し素晴らしい相乗効果が生み出せていると自負しております。

 

水なすの美味しい召し上がり方

 新鮮な水なすは生での召し上がり方が最も食感や味を楽しめるのでおすすめですが、その他にも煮物など柔らかい食感を生かした調理方法も美味しく食べるにはもってこいです。

 

「生で食べる」

 水茄子は生食できるため、りんごのようにそのまま齧ることも出来ますが、簡単にヘタを切り落として縦に均等に切り分けて醤油などを掛けた方が美味しく楽しめるでしょう。
その他にもサラダや刺身など、特に生ハムとの相性はメロンに匹敵するほど最高です。

水茄子のほのかな甘みと生ハムのちょうどいい塩味が絶妙なハーモニーを生み出し、水ナスの豊潤な果肉の食感とそこから湧き出る瑞々しい果汁が舌を楽しませてくれます。大阪府泉州では料理屋さんや居酒屋メニューとしてとても人気があります。

 

「漬物にする」

水なすを召し上がるのに特に美味しいのはぬか漬けです。
市販の調味液を使った浅漬けの素を使用しても楽しめますが、塩漬けは水茄子の特徴である瑞々しさを損なうのでおすすめしません。
水茄子は糠漬にするとそのほのかな甘みに加え、糠床の酸味や旨味が上手くマッチングして素晴らしい味のハーモニーがで生まれます。
お酒との相性が非常によく、晩酌のビールや日本酒とのコンビは最高です。
ぬか漬けの場合は程よく皮がしなっと更に柔らかくなっているので、ヘタを切り落として、1センチくらい切り口に十字または放射状に切れ込みを入れて、そこから親指を滑り込ませて手で割くと水茄子独特の果肉の食感が舌に楽しく美味しいので、ぜひお試しください。
ぬか漬けは発酵の過程でヨーグルトでおなじみの乳酸菌が豊富に発生し、腸内環境を整えるほか、美肌にも良いとされています。

 

和え物にする」

水茄子は生食ができる茄子であることはお伝えしてきましたが、和え物の具材としても優秀です。
水茄子の和え物は果肉の調味料との親和性と柔らかさが本領を発揮します。
特にごま油との相性は抜群でそのとろけるような風味はほっぺたが落ちること間違いなしです。
ポン酢を使ったレシピも併せて下記をご覧ください。

ごま油と塩昆布を使った水なすのレシピです。
水なすとごま油との相性は抜群でその他調味料との合わさった風味とまろやかな食感は頬っぺたが落ちるほど美味です。
ご飯のお供として最高のお箸が進むおかずレシピです。

焼く・煮物にする」

水茄子はもちろん焼いたり、煮たりしても美味しいこと間違いなしです。
最もおすすめは牛肉と煮る甘辛煮です。牛肉からでた出汁と煮ることにより柔らかくふわふわとした口の中で甘辛く溶けるような食感の水茄子は絶品です。
その他にも肉厚なステーキや味噌煮、グラタンなどチーズを使用した調理方法もおすすめです。

水なすと牛肉を煮込んだ甘辛煮のレシピです。
こちらも相性抜群で牛肉の出汁がしみ込んだほろほろと解けるような柔らかい水なすのとろける食感が素晴らしい。
柔らかい水なすだからこそ味わえる豊潤な味わいをお楽しみください。

水なすに肉味噌の旨味とゴーヤの苦味のアクセントが効いたおすすめのレシピです。
豆板醤やコチュジャンなどのピリ辛とごま油の香ばしさも相まって抜群のメインになるおかずです。
やさしい水なすの食感とちょうどいい苦味とピリ辛の刺激が食を進めてくれます。

こちらも水なすにチーズを使ったイタリアンなレシピです。
ツナとチーズのコンビが水なすと絡み合った豊潤で美味しいメニューです。
乾燥パセリの薬味のアクセントを添えて食感のコントラストも楽しめます。

古来からの食文化である伝統野菜の風味を堪能しよう

いかがでしょうか。水茄子は通常の茄子とは似て非なる性質を持った泉州名産の瑞々しく絹のような皮の柔らかさが特徴の野菜であることがお分かりいただけたでしょう。
この日本古来から伝わる伝統野菜 水茄子を大事に受け継いでいきたく、皆さんに知ってもらい楽しんで頂きたいと思っています。
一度召し上がって頂ければ、茄子のイメージを覆すほどの風味や食感の違いを体験して頂けると確信しています。
先に書いた通り、大阪府以外では百貨店やデパートで購入することが主な入手の手段でしたが、今はインターネットが発達したおかげで通販でも簡単に手に入ることが可能になりました。
農産物のポータルサイトや今やメルカリなどのフリマサイトでも直販で農家さんから購入することができます。
水茄子は4~10月頃に市場に出回りますので、その間に各販売サイトをチェックするのが良いでしょう。
以下は一例ですが、これらのサイトで生の水茄子を購入することが可能です。

生の水茄子が購入できる販売サイト一覧


 

「水茄子のぬか漬けを購入」

また、弊店は生の水茄子は販売しておりませんが、ネット通販にて水茄子のぬか漬けを販売しております。
宜しければこちらも併せてご覧ください。